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「ダイバ―シティ社会で医師になるあなたへ伝えたいこと」

【実施日】令和3年12月22日(水) 12:15~12:45

【講 師】島根大学医学部小児科学講座 准教授 鞁嶋有紀先生

【参加者】18名

 先生は島根県のご出身で、富山医科薬科大学をご卒業後、鳥取大学医学部小児科に入局されている。本年4月に島根大学医学部小児科学講座の准教授に就任された。
 先生は、鳥取大学時代に女子学生から「いつ結婚したらよいか、いつ出産したらよいか、両立できるのか」という質問を受ける事が多くあったそうである。その時は“タイミングで”等と言葉を濁すような回答をしていたと話され、実際のところどのような現状なのか2011年小児科医師現状調査報告書のデータを基に講演は始まった。データは10年前のもので若い世代に多少の変化はあるかもしれないが、概ね状況は変わっていないとしながら、小児科医の男女差を説明頂いた。先の女子学生の質問に答えるならば、「出産育児とキャリア形成の両立は狭き門というような結果である」と話され、男女差の要因については「無意識のバイアス」や「ステレオタイプ・スレット」が関与しているのではと具体例を示された。
 続いて先生ご自身のキャリアについてもお話し頂いた。先生が入局された頃は、女性医師が結婚し家庭・育児・仕事をバリバリこなすというロールモデルの存在はなく、結婚するという選択肢が少なかったそうである。
 しかしその価値観を大きく変える切掛けになったのがアメリカ留学で、多様な背景を持った人々や価値観に触れ、大きなカルチャーショック受けられたそうである。女性医師のシングルは少なく男女平等に両親で子供を育てるという意識が高く、留学前にインプットされていた“家事や育児は女性の役割”という『社会生活の性』は払拭されたと話された。
 先生は産後から仕事復帰時に至る様々な出来事について、小児科医の20年のキャリアを持ってしても想定外の事ばかり起きたと話され、母親・職業人としての自己嫌悪や小児科医としての矛盾等詳しくお話し頂いた。育児経験から気付いたピットホールとして、「男女共同参画と言いながらも現況はどれだけ“女性”が仕事と育児を両立させるかに焦点が当たっている、男性こそもっと育児に関わるべきではないか、女性だけ頑張るやり方でいいのか」と提起された。医師主導型からチーム医療診療参加型への提案、女性医師におこる“インポーター現象”“女王バチ現象”についても説明を頂いた。
 学生へのメッセージとして、男子学生には『1.家事育児への参加、2.支える側の支援(仕事量の削減・意識の変化)、3.女性医師を配偶者に持つ場合は医療を支えている従事者を家族に持つという意識、4.男女同等にキャリアを形成する権利』、女子学生には『1.育児や家事は全部しなくてよい、2.キャリアを維持する意志、3.男化もしくは遠慮する生き方ではなく“自分”で働く』と贈られた。最後に「時代はダイバーシティ社会に突入している。まずはそれぞれの意識変革から始まる。皆さん一人一人が歴史をつくる。」と結ばれた。
  先生の提起を受けて、ダイバーシティ社会に生きる学生達は、新たな価値観を包含・受容することとそれぞれの生活やこれからの働き方を創造していくのではないかと思われる。