上野先生

【実施日】令和3年6月8日(火)18:00~19:00

【テーマ】地域で働く~こんな時あなたはどうしますか~

【講 師】浜田市国民健康保険あさひ診療所
           所長 上野 伸行 先生

【参加者】20名

【概 要】

 上野先生は総合診療医で、浜田市あさひ診療所の所長である。今年からは大学の『しまね総合診療センター』に週1回お見えになり、地域で働く総合診療医が地域で働きながら学生や研修医、他施設の指導医と交流できる仕組み作りをされている。

 講演は、はじめに上野先生の私見として、1.診療所の役割(困った時に何でも相談できる場所、患者と専科・地域・行政との架け橋、住民に安心を与える)と、2.診療所の魅力(家族みんなを診ることができる、上流アプローチで予防できる、安心して地域で暮らす手伝いができる)の2点をお話し頂いた。続いて、先生が経験された2症例を提示され、学生に「こんな時あなたはどうしますか」と問いかけ、対話をしながら双方向型で進められた。

   症例から総合診療医は、日常の診療において対象となる患者だけを診るのではなく、患者の背景にある「家族の木」をイメージしながら診療を行う事が大切であると述べられた。疾患に焦点を当てるのではなく、病を持ったその人自身に向き合い、病が個々人の生に及ぼす影響をも含めて対象を総合的に捉えることの大切さをご教示頂いた。また、医学的に捉える疾患は『個人―臓器―組織―細胞』へとベクトルを伸ばすが、総合診療医は、疾患を押さえた上で、『個人―家族―地域』へのベクトルを持ちながら、地域全体の健康問題に関わることの重要性を図で示された。『生物・心理・社会モデル』のスライドでは“生物学的サポートは私が生きることを支える。心理・社会的なサポートは私がいきいきと生きることを助けてくれる。”という言葉があり、それまでのお話がストンと腑に落ちたように感じた。

   最後に、「医師として医学を学び続けなければ、患者さんは安心して地域で過ごすことはできない。病気だけでなくその人が何を大事にしているのか、その人の背景に何があるのかを知って、その人にとって何が一番幸せなのか考えながら診療することが地域で働く醍醐味である」と締めくくられた。