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【実施日】令和4年1月11日(月)18:00~19:00

【講 師】国立病院機構本部DMAT事務局(災害医療専門職)小早川 義貴先生

【テーマ】災害医療をするということ

【参加者】35名

  小早川先生は2004年島根医科大学を卒業後、島根県立中央病院救命救急センター等を経て、国立病院機構災害医療センターにおいて災害医療に従事されている。現在国立病院機構本部DMAT事務局に所属され、福島復興支援室から配信頂いた。
 災害の定義として「災害対策基本法第2条1号」を示された上で、被害の程度を加味したGunn S.W.Aが提唱する定義を、絵を用いてわかりやすく説明頂いた。また、災害に関して予防から復興に至るまでの様々な局面で展開される医療についてWHOの定義を紹介頂いた。
 近年の災害での相談はDMAT調整以外に、震災関連死や豪雨災害による遺族対応、支援者側の健康問題等、色々な課題が持ちあがり、各専門家と一緒に対応することが多くなったそうである。
 この度の新型コロナウイルス対策においても、政府はDMATの活用を言及し、武漢帰国者対応やダイヤモンド・プリセス号の対応、また長崎のコスタ・アトランチカ号の医療支援で現場責任者を務められ、今でこそ話せるエピソードも交えお話頂いた。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、厚労省がクラスター対策班や自治体支援を目的にした地域支援班を作り、その一部をDMATが担い感染制御と同時に業務継続に係る体制整備を行い、医療崩壊寸前の各地で実際に訪問診療に出向く等取り組みも紹介頂いた。
 災害による死亡については『直接死』と『間接死』があり、東日本大震災とコロナ禍を例にとり説明頂いた。災害を引き起こすハザードのみの対応では多くの命は救われず、災害によって引き起こされる生活の変化等混乱からもたらされる死を適切なマネジメントの提供により防がねばならないと教示頂いた。先生は「DMATはコロナ禍のこの2年間、コロナによる直接死亡は防げないが、『コロナによる環境悪化による死亡=間接死』については一定の成果を出したのではないかと考えている。死亡はなるべく避けるというオペレーションを常に組み立てるが、同時に残念ながら亡くなるケースについては、どうしたら尊厳ある死を提供できるかも考えてやってきた。」と話された。最期を迎える場所がどこであっても人間の尊厳は守られるべきであり、災害医療の最前線に立たれる先生の言葉は重く、医療者の姿勢として深く感銘を受けた。
 最後に、「災害医療というと地域医療の対極にあるように思えるが、平時の地域医療が破綻した際どうするかが災害医療なので、連続したものである。地域医療を担う人は災害医療のエッセンスを知っていてもらい、心停止をした人のBLSを誰もがするように、地域が被災した時の最初の一歩は地域の先生にしてもらえたらと思っている。誰でも災害医療のイロハを知っておいて欲しい。」と締めくくられた。