二階先生

二階先生

【テーマ】全身管理ができる医師を目指して

【実施日】令和5年6月21日(水)12:15~12:45

【講 師】島根大学医学部麻酔科学講座 教授 二階 哲朗 先生

【参加者】25名

【概 要】

   先生は長崎大学のご出身で、今年の4月に麻酔科学講座の教授に就任された。「全身管理ができる医師を目指して」をテーマに「1.全身管理を学びたいと思った理由 2.実際に全身管理に関わるようになって思うこと」の2点についてお話し頂いた。

 ご自身のヒストリーを話すことは得意ではないとしながらも、出生地がアメリカで国籍をお持ちであることや、生活をしたことのないアメリカに住みたいという理由から、留学先を決められたことなど、初出しのエピソードもお聞かせ頂いた。

   先生は広島大学の泌尿器科医からスタートされた。そして、2年目に派遣された庄原赤十字病院での忘れられない数多くの症例や出会いを切っ掛けに、医師5年目で麻酔科医に転向されている。

   当時の庄原赤十字病院では、救急外来は一人当直で、自分が主体となって患者さんを診療し、いろいろな科の先生から医療技術を吸収されたそうである。その全ての経験がご自分の糧となり、「全身管理のできる医師(集中治療医)になりたい」という思いを募らせ、1998年に島根大学医学部麻酔科学講座に入局された。しかし、麻酔科医として多くの症例を経験すればするほど、全身管理の難しさを知り、「麻酔ができるだけではダメで、救急・集中治療・緩和・研究全部ができないといけない」という思いが強くなったそうである。

  「国籍を持つアメリカに住みたい」という希望が叶った留学では、“感覚器・痛み”の研究を行われ、「基礎研究の基盤が作れたこと、またそこで培ったものの考え方がその後の臨床にも生かされるものになった」と留学の成果を述べられた。 

   留学から10年目に、手術麻酔から“病態治療医学を基本として全身管理を行う”集中治療に従事された。全身管理を行うことで良かったこととして、「1.多くの症例に出会え、臨床経験ができた。2.重症度が高く(急変)ても、基本を実施することで医療が成り立つ3.全身管理の深みが知れた→向上心を維持4.医療を一緒にできるメンバーと出会えた(コロナ重症診療ではたくさん助けてもらった)」の4点を挙げられた。

   最後にメッセージとして、「1.一人の患者さんを大事に(かけがえのない経験)2.楽しみながら、目標をもって臨床にチャレンジ3.一期一会を大事に」を贈られた。

  先生のお話を拝聴しながら感服したのは、患者さんに寄り添う医療の実践と同僚や多職種に対するリスペクトである。「一期一会」は、経験を積まれる中で「人とのつながり」を大事に育て、関係の幅を広げてこられたからこそ贈られるメッセージであるように感じた。