【テーマ】緩和ケアと在宅医療の歴史から考える在宅医療の基本的価値と在宅医療のプロフェッショナリズム

【実施日】令和4年5月13日(金) 18:30~19:30

【講 師】東京ふれあい医療生活協同組合 研修・研究センター長 平原 佐斗司 先生

【参加者】19名

【概 要】

 先生はテーマについて、”在宅医療には日本特有の歴史があり、そこには先人が今日まで作り上げてた基本的な価値が眠っている。そのこと触れながら在宅医のプロフェッショナリズムについて語る”として、4部構成でお話し頂いた。

 1・2部は「ケアと医療の発生と歴史」「時代とともに変わる緩和ケア」についてお話し頂いた。1部では、人類史と家族・ケアの発生、呪術から医術の派生、経験・伝統・近代医学やケア・介護の起源、世界と日本の医療の対比等を教示頂いた。2部では、海外におけるホスピス・緩和ケア・エンドオブライフケアの歴史について様々なデータをお示し頂き、社会や疾病構造の変化により緩和ケアのニーズも変遷していることを学んだ。1・2部を通しケアと医療・緩和ケアの歴史的背景を辿り、事象の意味・変遷だけでなくその関連を多面的に捉えることができ、3・4部に繋がる基本的な知識となった。

 3部では「在宅医療の歴史と基本的価値」についてお話し頂いた。日本の在宅医療の歴史は、往診の始まりを江戸時代に見ることができる。病院の世紀の到来と言われる昭和30・40年代までは、開業医の宅診と往診が主流で地域の医療を支えてきた。計画的に訪問診療を行う「現代的在宅医療」が始まったのは昭和50年代で在宅医療の黎明期と言われている・先生は当時の先駆者が示した在宅医療の基本的価値と称される『患者中心:患者はhost 医療者はguest 医の本質はservice』『医療にアクセスしにくい人に医療を届ける』『暮らしの場で最期の時間を支える』等を、時代を経ても継承すべきものとして紹介された。

 在宅医療は黎明期・創成期を経て今日地域包括ケア時代に入り、その対象は大きく変化しているが、その基本的価値は今なお在宅医療の根底に連綿と受け継がれ、偉大な足跡を残した先人が偲ばれた。

 4部では「在宅医のプロフェッショナリズム」についてお話し頂いた。先生ご自身は、師と仰ぐ佐藤智先生からプロフェッショナルとは「魂に関わる仕事をする人です」と教わったそうである。1990年代に入りプロフェッショナリズムが強調されるようになると、定義やカリキュラムの開発が進み、医師としての活動全般の基盤をなす概念として定義化された。先生もまた在宅医療専門医の育成において6つコアコンピテンシーの筆頭にプロフェッショナリズムを挙げ、そのカリキュラム作成に携わられている。在宅医療のプロフェッショナリズムについては、3部でご紹介頂いた在宅医療の基本的価値を含む定義を教示頂いた。

 ケアと医療の歴史を辿ることで始まった地域医療Webinarは、学生にとって自分が生きている時代の医療が絶対的なものではなく、変わり得るものとして学び、過去と現代そして未来に、医師を目指す自己とのつながりを見出したのではないかと考える。在宅医療の基本的価値・プロフェッショナリズムもまた、医学を学ぶ意味や価値について認識を新たにし、自らに問い考えていく事の大切さを教示頂いたように考える。

 

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