【テーマ】総合診療の魅力
【実施日】令和4年6月13日(月)18:00~19:00
【講 師】大田総合医育成センター 講師 木島 庸貴 先生
【参加者】18名

【概 要】
先生が総合診療の道を歩まれる切っ掛けは、初期研修時に“専門領域と総合診療では診断思考プロセスに違いがある”と気付かれたことにある。
専門領域が自分の領域か否かを見極める思考に対し、総合診療は対象を心理・社会・生物学的視点から多面的に捉え横断的に思考するプロセスで、先生はそれを面白いと感じ印象に残ったそうである。
「ものを見る時に一方向から見るだけではわからないことがあるのと同じである」と話された。
その後、家庭医療後期研修に進まれ、島根大学で学位を取得されている。


現在、島根大学医学部総合医療学講座、大田総合医育成センターで、医学生や初期研修医の教育に携わりながら、大田市立病院と2カ所の診療所で診療にあたられている。
先生は最初に1年生の学生に総合診療医のイメージを問われ、「疾患だけでなく地域全体をみる」という回答に、“嬉しい”とコメントされた。
「以前は総合診療医と言うと診断学をする医師、或いは僻地診療、開業医イコール総合診療医というイメージが強かったが、随分と認識が変わりつつある」と話された。


続いて、診療をされている1病院2診療所の地域と患者さんの特徴等をお話し頂き、病院と診療所の2症例を提示され、総合診療医の診断過程を紹介頂いた。
いずれも単純な生物学的評価と治療のみでは解決できない問題を抱えた症例で、健康問題に影響を与える社会的な側面や心理的側面を具体に説明頂き、どのようにアプローチをされたのか教示頂いた。
総合診療専門医の定義にある「扱う問題の広さと多様性」、「多面的な側面から診断」等、言葉の理解だけでなく状況の想起や複眼的思考の理解に繋がった。
また、生活習慣病を川の流れに例えた厚労省のイメージスライドを提示された。
診療所では予防的側面からの地域へのアプローチとして“住民や多職種との意見交換会・健康講和”等、上流での生活習慣改善に向けた取り組みが行われ、医療機関内にとどまらない活動を紹介頂いた。


最後に総合診療の魅力を「診療で取り扱う問題の広さと多様性」「病院総合診療としての楽しさ(総合診療医の視点による評価や役割)」「診療所医師としての継続的な関わり、アクセスの良さから生まれる関係性の構築と患者理解の深まり」「地域という視点での健康問題にアプローチする活動」の4つにまとめられた。
中でも、診療所は0歳から高齢者まで診れて、「子供の成長をみまもる楽しさとその一方で老化に向き合いながら最期を支える寂しさがあるが、この継続性が総合診療の魅力でありやりがいでもある。」と述べられたのが印象に残った。


学生の感想には「総合診療医の魅力や意義について深く知ることができた。より総合診療医になりたいと思えた」「総合診療医を目指すにあたっての学習面のモチベーションの維持に繋がった」等の感想が寄せられた。

先生

質疑

会場