【実施日】令和6年2月28日(水)18:00~19:00
【テーマ】高齢者医療とポリファーマシー
【講 師】やわらぎクリニック(奈良県)院長 北 和也 先生
【参加者】15名
【概 要】

 先生は奈良県のご出身で、お父様のクリニックを継承され現在院長を務められている。また、2023年度より島根大学大学院医学系研究科医科学博士課程に在籍されている。

 お話の導入には国家試験の出題基準にある“ポリファーマシー”の記載を示し、実際に出題された問題が提示された。
答えは終了時に回答という流れで、学生達の講演への関心をグッと引き寄せられ始まった。
ポリファーマシーは日本語訳では「多剤併用」であるが、先生はポリファーマシーの研究報告等を示し「5剤以上」「その患者さんにとって必要以上に服用している状態」と定義された。
特に高齢者ほどポリファーマシーのリスクが高まる。5つの慢性疾患を有する高齢女性の症例を示し、診療ガイドラインを遵守した場合の処方薬の数や、課せられるタスクについて説明頂いた。
ポリファーマシーでのリスク上昇については相関関係か因果関係か、解釈には注意が必要であると教示頂いた。

 また、ポリファーマシーに陥る要因として、「患者・医療者・環境」の3つを挙げられた。
患者要因では高齢化/多疾患併存、複数への専門医受診、ヘルスリテラシー、コミュニケーション不足等を挙げられた。
医療者側の要因としては複数の診療ガイドラインの遵守、処方カスケード、足し算処方、DO処方、知識不足(減処方、EBM)、コミュニケーション不足(患者さん、医師同士)等である。
処方カスケードについては具体例を示され、複数の医療機関を通院している時や多剤処方時に「処方カスケード」がないか医師や薬剤師に確認することの重要性を強調された。
環境要因としては、専門家の乱立、教育、製薬会社の宣言、全処方内容の一元管理困難、権威勾配、医療アクセスのハードルが低い(国民皆保険制度)を挙げられた。

 ポリファー マシーは要因が複雑に絡みあうため、単に薬の数を減らすことだけでは解決しない。
患者さんの病態に対する適切処方をする上で、価値観の変化や多様性、生活背景にも理解を示していくことの重要性を指摘された。
そのためには医師・薬剤師のラインだけでなく、看護師やケアマネージャー、ホームヘルパーさんなど多職種からの情報も大事な視点で一元化していくことが大切であると教授頂いた。

 最後にまとめとして7つのメッセージを頂いた。
1.高齢者はマルチモビリティからポリファーマシーに陥りやすい。
2.処方カスケード・PIMs・ポリドクターに注意
3.副作用・PMIsはbiomedicalのみならず、psycho-socialへの影響を知ろう
4.そのために多職種の視点・知恵を借りよう
5.クスリもリスクだけど
6.過度な「クスリもリスク」もリスク!
7.減薬は目的ではなく、あくまでも1手段であることを心得る。

以上、患者さん主体の診療風景が見える分かりやすいお話であった。もちろん国家試験問題はばっちり正答!!である。

先生