令和4年度ワークライフバランスセミナー(職員FD)

【テーマ】医療従事者の仕事のやり甲斐と幸福感 ~Well-being~

【日 時】令和4年9月21日18:00~19:00

【場 所】ギャラクシー

【講 師】石川県立大学 教養教育センター 教授 澤田 忠幸 先生

【参加者】30名

先生は教育心理学がご専門で、医療職のウエルビーイングについて研究されている。

先生は、「ワークライフバランス(WLB) を考えることは、自身のキャリアデザインを考えることである」と話された。キャリアとは、生涯において個人が果たす一連の役割のことをいい、ワークキャリアとライフキャリアがあり、WLBを考えることに繋がる。

医療系のメンタルヘルスについては、これまで「バーンアウト」や「感情労働」などネガティブな面に焦点を当てて研究されることが多かった。しかし、ネガティブな面をすべて排除すれば、また頑張って働く気持ちになるかというとそうではない。そうした中で、人生が幸福であること、自身の人生を“よりよく生きる”ことを追求した「ポジティブ心理学」という考え方が注目されるようになった。その一つが「ウエルビーィング」である。

先生は「ウエルビーイング」を、“個人の精神的健康のポジティブな側面に着目した概念”と説明され、「主観的幸福感」と「心理的ウエルビーイング」の2側面があると話された。心理的ウエルビーイングは「生きがいを感じられること、夢に向かって充実していること」といったポジティブな心理状態を意味する。その尺度として、6次元の定義(Ryff)を紹介された。ウエルビーィングの研究において、近年特に注目されているのが「信頼できる他者関係が築けているか」という点であり、コロナ禍におけるメンタルヘルスと関連していると教示頂いた。

職業意識・WLBとウエルビーイングについて、従来の看護学や心理学の研究では、3つの観点から取り上げられてきた。その3つとは、1.職務満足、2.職場組織や職業に対するコミットメント意識、3.仕事と家庭との多重役割間のスピルオーバーであった。様々な研究から、ハードな職場でも「生き生き働ける」には職場の人間関係が大きく影響し、その中でも特に「心理的安全性」の高いチーム作りが重要であることが分かった。心理的安全性を保つには、1.笑顔、2.話しかけやすい表情や態度、3.傾聴、4.伝わるコミュニケーション、の4要素が必要となる。個人が発言しやすく、コミュニケーションがチーム内で頻繁にとれるようになることで、集団的知性が高まりやすくなるとお話し頂いた。

最後に、仕事に家庭に多重役割を持つ専門職者が、ハードな職場環境でも生き生きと働けるためには、1.心理的安全性を保証する、2.『自律』と『協同』によるチームワーク、3.ライフキャリアの観点からのサポートの3つが重要であるとまとめられた。働く者のメンタルがネガティブスパイラルに向かわないようにリスペクト(尊敬)と信頼・共感を忘れないことが仕事のやりがいと幸福感(ウエルビーイング)につながると学んだ。

講演を通し、自己のキャリアを振り返ると、WLB・キャリアデザイン・ウエルビーイングはつながっていることを実感した。まずは、心理的安全性の保証等講演からの学びを職場にフィードバックすることが重要であると感じた。

参加者アンケートでは、「WLBを考える良い時間となった」「ポジティブ思考について考えることができ元気が出た」などの感想が寄せられ、WLBやウエルビーイングに関心の高さが伺えるセミナーとなった。

先生

会場

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