令和4年度第3回 Career Webinar

【テーマ】学生のあなたに伝えたいこと「感染症医編」

【実施日】令和4年6月1日(水)

【講 師】島根大学医学部附属病院感染制御部 准教授 羽田野 義郎 先生

【参加者】27名

 

 先生は、3月1付けで感染制御部の准教授に着任された。今年度、感染対策専任責任者に就任されご活躍である。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に拡大し、パンデミックを引き起こしてから、臨床感染症医は医療の最前線に立たされ注目が集まっている。

 臨床感染症医としての守備範囲は、主に感染症診療・感染対策・感染症疫学・臨床微生物で、日本の場合は予防医療を含み、より専門的なサブスペシャルティ領域としては、熱帯・渡航医学やHIV・移植・国際医療・WHO に関与すると教示頂いた。

 先生は一臨床医として診断する時期は終わり、現在は感染症コンサルタントとして、全診療科を対象に感染症の側面から相談を受けていると話された。感染症コンサルタントは、放射線科医のようにドクターズドクターのようなところがありコンサルテーションスキルが求められる。また、対看護師・対検査技師等チーム医療を行う多職種への説明や、対県・対国等行政関係者の人たちと話し合う機会もあり、プロとしての楽しさ・難しさを感じているそうである。

 各診療科で求められる知識は異なり、外科の術後のドレーン管理、免疫抑制剤と免疫不全の関わり、化学療法・薬剤の知識やそれに伴う固有の感染症、各科の解剖やお作法等が求められる。また、感染症は公衆衛生とも親和性が高く、基本5領域と言われる社会行動科学、保健政策・医療管理、疫学、生物統計学、環境産業衛生についても体系的に知識を身につける必要があり、決断科学や行動経済学等も有用であると話された。

 先生が臨床感染症医の道を歩まれたのは、国立国際医療センターで臨床研修中に受け持たれたアスペルギルス肺炎の患者さんが切っ掛けだったそうである。先生はこの時今後も同じような症例の患者さんが増えていくことを懸念され、感染症を防ぐ仕事がしたいと考えられたそうである。日本には当時、感染症コンサルタントという分野はなかったが、米国には存在しており米国の研修方法を調べられた。その結果、当時では珍しい総合内科レジデントとして専門研修をスタートされ、その後は静岡がんセンターにおいて臨床感染症医として研修を積まれた。何れも指導医や同期に恵まれ、切磋琢磨する環境で熱いディスカッションを繰り返し、研鑽を積まれた。

 また、Advanced fellowship  として海外留学で基礎研究にも取り組まれた。帰国後、学位を取得し、臨床感染症医の数を増やしたいとの思いから、大学での人材育成教育を行ってこられた。

 キャリアについて、学生に「自分のキャリアは自分で決めるしかない」「計画以上のことはできないので、先を見据えた計画を立てる」ことをアドバイスされた。更に、「卒業後の評価は学生時代の成績に相関はなさそう」と私見を述べられ、卒業後の環境などで 「Change Agent 」となることが大いにあることを話され、とても勇気づけられた。

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